大阪府立住吉高等学校 第63回卒業証書授与式校長式辞
校庭の黄色のろうばいが良い香りを放っていたと思えば、今ではあちらこちらで梅の花が咲き、春の訪れが確実に迫っていることを感じます。
大阪府立住吉高等学校第63回卒業式を挙行いたしましたところ、公私ご多用にもかかわりませず、大阪府教育委員会のご代表をはじめとして、地元中学校の校長先生、日頃よりご支援を賜ります本校同窓会、後援会並びにPTAのご代表、旧職員の皆さま方など、多数のご臨席を賜り、巣立ちゆく若人の門出を祝福していただき、厚くお礼申し上げます。また、保護者の皆さまにも、多数ご出席いただきました。さぞかし、お喜びのことと拝察し、心からお祝い申し上げます。
卒業生は、ただ今卒業証書を授与いたしましたとおり、国際文化科 157名、総合科学科 114名、計271名でございます。
卒業生の皆さん、卒業おめでとう。住吉高校での3年間、皆さんの心の中には語り尽くせない青春の貴重な思い出と、たくさんの友情が得られたことと思います。伝統ある住吉高校で学び、成長し、本日卒業を迎えたことは、皆さん方の3年間の努力の結晶であるとともに、これまで慈しみ、育んでこられた保護者やご家族の愛情、時には優しく、時には厳しく、教え導いてくれた本校教職員の支援、そして共に学び、励ましあった仲間たち、これら大勢の人に支えられたものであることを忘れてはなりません。
卒業式は、ライフサイクルの中で、一つの終着点の場であり、次のステップへの新たな出発の場でもあります。皆さん方はそれぞれの道を歩み、社会に向かって大きく羽ばたいてくれると思います。昨年完成した同窓会館に、住吉大社の高井権宮司さんによる「大鵬一挙九万里」の書を掲げていることは、12月の全校集会で紹介しました。この書のごとく、社会に大きく羽ばたいてくれるものと期待しています。
今、皆さんが向かっている社会は、大きな転換期を迎えています。過ぎし、20世紀は科学技術の時代と言われ、人類の英知により科学の分野は大きく進展し、様々な新しい技術が生み出されました。そして、大量生産と大量消費の社会を生み出し、今までにないぐらいのスピードと圧倒的な物量で社会は発展してきました。我々の物質的な願望が次々と叶えられた結果、社会は大量の商品であふれ、人々の暮らしは確実に豊になり、かつてないほど生活の利便性は向上しました。20世紀の時代は「物の時代」と言われる所以です。
しかし、その反面、我々の欲望は限りなく増大し、自らの生活と欲望を満たそうと、人類が自然を自分たちに都合良く変化させた結果、自然環境の破壊という大きな問題を起こしてしまいました。20世紀後半から環境問題は、地球規模に拡大しているのは衆知のとおりです。
21世紀に入り、環境改善技術の進展が求められ、その面で世界をリードする我が国の研究成果や技術力への期待は高まっています。しかし、環境問題を生み出したのは科学技術であり、科学技術の進化だけが環境問題の根本的な解決には成り得ません。その時代、時代での社会の在り様、人々の考え方が最も大切であることに人類は気づきました。自己の欲望と利益追求は、自分以外の人間存在の否定につながるということを人類は認知し、自然と共生した持続可能な循環型社会を築こうとしています。そのため、科学技術を進展させる背景として人間の精神の在り様を考えること、素朴な自然への畏敬と感謝の想いを取り戻すことが求められています。つまり、人と自然の共生、自分と他者との共生が必要な時代になっています。
エジプトやチェニジアで始まりリビアに広がった最近の民主化は、世界中の人々がパソコンや携帯のインターネットにより結ばれ、人々の精神のグローバル化が進み、世界中の人々が人間としての尊厳を共有することの大切に気づいたことによるものです。言い換えると、共生の精神の広がりが原動力となったと言われています。20世紀が「物の時代」であるのに対して、21世紀は「心の時代」であると言われています。
共生について、もう一つ例を挙げます。皆さんが生まれる以前のことですが、一人で30年間生き続けた小野田寛郎(おのだ ひろお)さんの話です。かつて日本には太平洋戦争を起こした悲惨な歴史があることはよく知っていますね。小野田さんは、日本の敗戦を知らず30年の長きにわたって、一人でフィリピンのルバング島で生き続け、発見されたときは52歳になっていました。小野田さんの発見に日本中のメディアは驚き、軍国主義の亡霊だという批判もありましたが、多くの人を感動させました。小野田さんが書かれた「君は一人で生きられるか」という本によると、発見された当時、「一人になっても生き抜いた男」としてメディアに大きく取り上げられましたが、ご本人は、とんでもない誤解だというのです。それは、服装や食べ物はジャングルであっても容易に手に入るわけではなく、ほとんどが近所の人からもらい、多くのフィリピン人に助けられたというのです。つまり、「私たち人間は一人では生きられない。」と強調されています。小野田さんの言葉に、「魚は水の中だけでしか生きられない。人は人の中だけでしか生きられない。」というのがあります。小野田さんの生き方から、平和の大切さと、人が生きるために社会の中で適応することの大切さを学ぶことができます。
社会に適応するとは、自分だけの幸せを望むのではなく、家族や周りの人の幸せ、世界中の人々の幸せも願い、共に安心して暮らせるよう努力することです。人としてお互いを尊重し合うことは当然のことであり、周りの人々と共に幸せを感じることができる社会、すなわち共生の社会を願い、努力することは人として生き方です。
ユネスコ・スクールの本校を卒業する皆さんには、共生の精神がユネスコの精神につながることを、これからもしっかり学びんでもらいたいと思います。皆さん方が住吉高校で培った力をバネにして、同窓会館に掲げられた「大鵬一挙九万里」の書のごとく、社会に大きく羽ばたき、社会に有能な人材として活躍されることを念じています。
いよいよ別れの時がきました。改めてメッセージを送ります。
皆さんは、これから向かう社会でしっかり研鑽を積み、他の人に援助を与えたり、支えたりして、社会に立派に貢献できる人であること。そして、皆さん一人ひとりは、この社会でなくてはならない、大切な人であることを決して忘れないでください。
ご卒業おめでとう。心から皆さんのお幸せと活躍を祈ります。
平成23年3月3日 大阪府立住吉高等学校長 紺野 昇